鍼灸・漢方薬は、仏教伝来の頃日本に伝わり、室町時代から江戸時代にかけて日本独自に発展しました。江戸末期にはオランダから西洋医学(蘭学)がもたらされ、明治政府はドイツ医学を正式に採用したため、鍼灸・漢方は非科学的な治療法であるとして正統な医学とはみなされませんでした。しかし民間療法として生き続け、中華人民共和国でハリ麻酔が行われたことなどからも、注目されるようになりました。また、科学の進歩により鍼灸の効果が生理・病理学的に実証されるようになり近年見直されています。
東洋医学では、生命を「気の存在の仕方」として把握しています。人の生命は気のあつまりであり、これが散れば即ち死であると考えます。ここでいう「気」とは、いわゆる「気のせい」という様な次元ではなく、一言では説明できない難しい概念ですが、一面では身体を巡り生命活動を正常にならしめるシステムと言っていいでしょう。この「気」が滞ると病に至ると考えます。病気を身体全体の変調ととらえ、「気の流れ」を整え、人間が本来持っている自然治癒力を高めることによって健康を取り戻します。ですから、主訴だけでなく体調が全体的に改善され元気になります。ひとりひとりの体質や症状に合わせた、副作用のない治療です。
鍼灸治療では、鍼を刺したり艾(もぐさ)で灸をしたりします。そこで治療点とするのが経穴(つぼ)です。
経穴(つぼ)とは
人の身体には、左右あわせて700近い経穴(つぼ)があります。
この経穴(つぼ)は、何の関連もなく点在しているのではなく、経絡(けいらく)という流れの上に配置しています。
身体の調子が悪くなると、経穴(つぼ)に知覚過敏・知覚鈍麻・圧痛や硬結、あるいは陥下など、特殊な反応が現れます。反応の現れるつぼを治療点とすることもあれば、反応のあるつぼから離れたつぼを治療点とすることもあります。
例えば、肩甲骨の内側の膏肓(こうこう)というつぼに硬結が見られた時、足のふくらはぎの承筋(しょうきん)というつぼに鍼を刺して, 膏肓の凝りをゆるめるというやり方です。
また、自覚症状が現れる前に、つぼに現れる変化に注目して、鍼灸治療を施すことで、「未病を治す」(病気になる前に予防する)こともあります。
経絡(けいらく)とは
鍼灸医学では、つぼとつぼを結ぶ道筋があり、特定の内臓と繋がっていると考えています。そして、経絡を「気」の流れの道であると考えます。この経絡は目に見えるものでもなく、神経系とも血管系とも一致するものでもなく、今のところ実態としては捉えられていない不思議なルートです。しかし、2千年以上にわたる臨床経験の積み重ねの中で体系化され確立されたものです。
経絡は全身に縦に12本流れており、それぞれに臓腑の名前がつけられています。肺経・大腸経・胃経・脾経・心経・小腸経・膀胱経・腎経・心包経・三焦経・胆経・肝経です。それらは、手足の末端から始まって臓腑に終わるか、臓腑から始まって手足の末端に終わっています。その12経絡に加え、身体の中心を流れる督脈と任脈という流れのうえにあるつぼを正穴といって主に治療に用いています。


